自分にとってのDevRel原点回帰

Taiji
8 min readDec 8, 2023

はじめに

みなさん、こんにちは。DatadogでDeveloper AdvocateやってますTaijiです。

こちらのブログは DevRel Advent Calendar 2023 12月9日の記事になります。テーマは「自分にとってのDevRel原点回帰」としました。
なぜこのテーマにしたか、簡単に説明したいと思います。

最近、特に日本では(日本企業では?)、DevRelという言葉の拡大解釈がされてきています。言葉は生き物ですし、大多数がそのように定義したのならば、それはそれで正しいのでしょう。
しかし、本当は一部でしかそのように解釈されていないことが、あたかも「現在はこのように解釈するんだ」と、その他大勢に対してミスリードされてしまうのは、やはりこの仕事をしていると避けたいな、と思うわけです。

テクニカルエバンジェリスト・デベロッパーアドボケイト

さて、私がDevRelを本格的に仕事の一部に取り入れ始めたのは2015年頃になります。その頃、DevRelという言葉は日本ではあまり一般的ではありませんでした。広報を意味するPR(Public Relations)に対して、オーディエンスが開発者であることを想定したDevRel(Developer Relations)が概念として作られたと認識しています。

もちろん、DevRelのアプローチはもっと昔から取られてきました。自社が提供する開発者向けツール、API、プラットフォームなどを使ってくれるユーザーに対して、同じ開発者としての視点で、同じスキルレベルでコミュニケーションを取り(Technical Evangelism/Developer Advocacy)、そのユーザーの声を聞く(User Voice/Developer Voice)。そして、それを自社にフィードバックし自社プロダクトを成長させ、ユーザーである開発者たちと良好な関係を築く。これこそが、DevRelの本質だと思います。

コミュニティ(Online Forum/User Group/Social Network Services)は、これらの活動を行う「場」として存在しており、元々の目的を失ったコミュニティはDevRelとは関係のないただのコミュニティでしかありません。

DevRelCon London 2016を振り返る

ちなみに、みなさんDevRelConをご存知でしょうか?DevRelConは、DevRelに関係する、または興味のある方を対象としたグローバルカンファレンスです。
コロナが明けて、対面カンファレンスとして帰ってきたDevRelCon London 2023のLPにはこのように記載されています。

DevRelCon London was a two day conference bringing together developer relations, education, marketing, and community professionals for sharing, learning, and communing.

Developer Relations、教育、マーケティング、コミュニティのプロが対象となっています。

そして、DevRelCon 2016を振り返って見たいと思います。なぜ、2016かというと、私がGlobal規模でのDevRel市場に初めて触れたイベントであり、私が日本人として初のDevRelConのスピーカーとして選出されたイベントでもあるからです。そう、本記事のテーマは「自分にとってのDevRel原点回帰」なのです。

この時、私が一緒の舞台で登壇した、他のスピーカーにどんなメンバーがいたか、そしてどんな話をしたのか、見てみたいと思います。全員は紹介しませんが、その後私と様々な場面で関わってくる人たちを中心に紹介します。セッションタイトルは、分かりやすいよう私の方で日本語に意訳してます。所属や肩書は当時のものです。

AAARRRP DevRel戦略フレームワークの紹介
Phil Leggetter @ Nexmo

開発者エバンジェリズムを測定
Rey Bango @ Microsoft

信頼性の義務
Jessica Rose @ Crate.io

コミュニティの再生
Andy Piper @ Twitter

開発者向けイベントでのDeveloper Experience
Caroline Lewko @ WIP

手探りでやってみよう:DevRel戦略の研究
Baruch Sadogursky @ JFrog

ロシアにおける開発者コミュニティの構築
Yelena Jetpyspayeva @ Bright Computing

採用の心理学
Andrea Dobson @ Container Solutions

デベロッパーリレーションズ VS デベロッパーマーケティング
Michael Ludden @ IBM

各セッションの詳細は、リンクを張っておいたので是非実際に視聴してみてください。とてもためになる内容が多いです。
こうしてみると、傾向として、DevRelの戦略や方法論についての話、開発者コミュニティの話、DX(Developer Experience)の話、デベロッパーマーケティングの話、と分けることができそうです。
注目したいのは、これら全てにおいてターゲットとなっているオーディエンス(セッションのオーディエンスではなく、各セッションで取り上げている内容の対象者)は全て開発者(Developer)である、ということです。
また、一つだけ採用(Hiring)のセッションがあるのが興味深いですね。これは内容を見てもらうと分かるのですが、Developer AdvocateやTechnical Evangelistを採用するためのお話です。昨今、日本で語られている技術採用みたいな文脈とは異なります。

その他、第一線でDevRelを率いてきたメンバー

Brandon West:当時Send Gridでエバンジェリスト、その後AWSでDevRelの組織をリードし、現在はDatadogでDev Advocacy TeamのLeadで私のManager

Joh Nash:当時GitHubでDeveloper AdvocateやProgram Manager、現在はTwilioでDeveloper EducatorとProgram Manager

Jennifer Sable Lopez:当時Mozでコミュニティマネージャー、その後OutSystemsでDevRel TeamのLeadで私のManager、現在はContentfulでDevRel TeamのHead

もちろん、他にもたくさんいますが、皆に共通して言えるのは、DevRelの原点である「Vendorの視点ではなく開発者の視点でDeveloperにリーチして、そのDeveloperを大切にする、つまりVendorとDeveloperの間に技術力を以て信頼関係を築く」ということを行っている、になるかと思います。

まとめ

DevRelというのは単なる言葉であり、その言葉をどのように解釈するか、どのように使うかは、人それぞれ異なることもあるでしょう。
ただ、本来の意味を完全になくした状態で使われる言葉としての「DevRel」は、我々が日々行っているDevRelとは別のものだと言えるかと思います。
そんなことを、最近考えさせられることがちらほらあったので、今回は自分の頭の中でDevRelを原点回帰させてみました。
結果として、DevRelの本質は、テクニカルエバンジェリストやデベロッパーアドボケイトが、その目的のために使うマーケティング手法、ということで再認識するに落ち着きました。

DevRelはGlobalで注目されている概念であり手法です。ぜひ、狭い日本にとどまらずGlobalな視点で、再度見直してみてはいかがでしょうか?

ではでは。

参考リンク

「DevRel」ってなんだろう by Atsushi Nakatsugawa

エンジニアのためのDevRel入門 by Taiji Hagino

Developer Relations- How to build and grow a successful developer program(書籍) author: Caroline Lewko/James Parton

DevRel – エンジニアフレンドリーになるための3C(書籍) author: Aya Tokura/Atsushi Nakatsugawa/Hideki Ojima

--

--

Taiji

Datadog Senior Developer Advocate | Ex-OutSystems Dev Community Advocate | Ex-IBM Dev Advocate | Microsoft MVP | 筑波大学、名城大学非常勤講師 | 記事は個人の見解であり、所属する組織とは関係ありません。